事業承継を考えている経営者のなかには、どこに相談すべきか悩んでいる方も多いのではないでしょうか。
事業承継について相談できる窓口には、事業承継・引継ぎセンターやコンサルティング会社、顧問税理士・公認会計士といった複数の選択肢があります。
受けられるサポートや得意としている事例は、窓口によって異なるので、自社の悩みに合った相談先を選ぶことが大切です。
そこで今回は、事業承継の相談先やケース別の選び方を紹介します。
相談先を選ぶ際にチェックすべきポイントも紹介するので、事業承継の相談先に悩んでいる方は、ぜひ参考にしてみてください。

【一覧】事業承継の相談先6選

事業承継の主な相談先には、以下の6つがあります。
- 事業承継・引継ぎ支援センター
- 金融機関
- コンサルティング会社
- 顧問税理士・公認会計士
- 弁護士
- 司法書士
一つずつ詳しく紹介します。
1.事業承継・引継ぎ支援センター
事業承継・引継ぎ支援センターは、全国に設置されている公的機関です。
中小企業の事業承継を支援するために設立された機関であり、金融機関での勤務経験や税理士、中小企業診断士などの専門知識のあるスタッフに無料相談ができます。
中立な立場でアドバイスをしてもらえるため、後継者がいない場合や親族外承継の場合に相談しやすいです。
初めての方でも安心して利用しやすい窓口といえるでしょう。
2.金融機関
取引先の金融機関が事業承継の相談を受け付けている場合があります。
日常的に取引している金融機関であれば、会社の経営状態を考慮したアドバイスをしてくれます。
金融機関で受けられるのは、資金調達やM&Aのマッチング支援などを含む包括的なサポートが多いです。
ただし、承継先が金融機関の顧客に限定されたり、手続きを提携先のM&A仲介会社に委託されたりする可能性があります。
金融機関に相談する際は、サポート範囲や紹介先の信頼性、中立性の有無を確認しておくことが大切です。
3.コンサルティング会社
専門的なサポートを求める場合は、事業承継に強いコンサルティング会社への相談が有効です。
なかには、経営課題の分析から承継計画の立案、後継者の育成支援まで、総合的なサービスを提供している会社もあります。
経験豊富な担当者が個別に対応してくれるため、複雑な課題にも柔軟に対応してくれる窓口といえます。
サポート範囲や料金はコンサルティング会社によって異なるので、ホームページなどで比較したうえで選びましょう。
4.顧問税理士・公認会計士
顧問税理士や公認会計士がいる場合は、まずその専門家に相談するのもおすすめです。
顧問として普段から信頼関係があるため、スムーズなコミュニケーションを取りやすいです。
会社の財務状況をより詳しく把握している担当者であれば、実情に即したアドバイスをしてもらえます。
ただし、事業承継の実績がない場合もあるので、サポート範囲なのかを確認しておくことをおすすめします。
5.弁護士
事業承継で法的な問題が絡む場合は、弁護士に相談するのが適しています。
たとえば、遺言書の作成や後継者間での権利争いのリスクがある場合は、弁護士のサポートを受けることをおすすめします。
弁護士は契約書の作成や法的トラブルへの対応に強いため、安心して手続きを進めやすいです。
ただし、弁護士によって得意分野が異なるので、事業承継に詳しい弁護士なのか確認することが大切です。
6.司法書士
司法書士は、会社の名義変更や登記手続きに関する専門家です。
事業承継では、会社の代表者交代に伴う登記の変更が必要となるため、司法書士の力が必要です。
事業承継の経験が豊富な司法書士であれば、書類作成以外のサポートも受けられます。
具体的には、経営者からヒアリングをし、適切な事業承継の方法を提案してもらえることがあります。
幅広くサポートしてもらいたい場合は、事業承継を得意としている司法書士を選ぶのがおすすめです。
【ケース別】事業承継の相談先の選び方

事業承継の相談先は、悩みに合ったところを選ぶことが大切です。
ここでは、相談先の選び方をケース別に分けて紹介します。
何から始めればいいかわからない
事業承継で何から始めればいいかわからない場合は、まず事業承継・引継ぎ支援センターに相談してみるのがおすすめです。
事業承継・引継ぎ支援センサーでは、事業承継に詳しい中小企業診断士や弁護士、税理士といった専門家と連携した支援を受けられます。
税金・相続・経営の課題を明確にしたうえで、次のステップを提案してもらえます。
後継者が決まっていない
後継者がいない場合は、事業承継・引継ぎ支援センターや事業承継に強いコンサルティング会社に相談するのがよいでしょう。
後継者がいないケースでは、親族以外の承継やM&Aを視野に入れた支援を受けられる窓口がおすすめです。
事業承継・引継ぎ支援センターでは、M&Aアドバイザーと連携して買い手候補の紹介や手続き支援を無料で提供しています。
事業承継に特化したコンサルティング会社であれば、専門的な視点で適切なアドバイスをしてくれます。
コンサルティング会社に相談する際は、料金や相談内容を確認したうえで依頼先を決めましょう。
後継者が決まっている
後継者が決まっている場合は、事業承継の方法に合った相談先を選ぶことが大切です。
ここから、おすすめの相談先を事業承継の方法に分けて紹介します。
親族内承継
子どもといった親族が後継者になる場合は、顧問税理士・公認会計士に相談するのがおすすめです。
顧問税理士や公認会計士は、決算や税務申告を通じて、会社の財務・経営状況を詳しく把握しています。
経営者の価値観や家族構成、事業への思いも理解していることが多く、気持ちに寄り添ったアドバイスをしてくれる可能性が高いです。
また、親族内承継では株式を譲渡するのが基本なので、相続税や贈与税、株価の算定、納税資金の確保といった複雑な税務業務が伴います。
税理士・公認会計士であれば、税負担を抑えたスムーズな承継をサポートしてくれるでしょう。
従業員承継
従業員承継では、親族内継承と同じく、顧問税理士・公認会計士への相談がおすすめです。
顧問税理士・公認会計士は、会社の経営状況をよく理解しており、従業員が無理なく事業を引き継げる方法を提案してくれる可能性が高いです。
従業員が事業承継する場合は、後継者が株式を買い取る場合が多いでしょう。
そのため、資金面でのサポートに強い金融機関やコンサルティング会社への相談も手段の一つです。
M&A
第三者に承継する場合は、事業承継・引継ぎ支援センターやM&Aに特化したコンサルティング会社に相談するのがよいでしょう。
当事者同士でM&Aをすることもできますが、M&Aの専門家に相談しながら進めるのが一般的です。
事業承継・引継ぎ支援センターは、全国に設置されており、無料でM&Aの専門家に相談できます。
M&Aに特化したコンサルティング会社は、企業の売却・買収に関する専門知識と豊富な実績を保有しており、取引をスムーズに進めてくれます。
具体的なサポート内容は、相手企業の紹介や売却価格の算定、契約書作成・手続きの支援などです。
特に中小企業の場合は、自社だけでM&Aを進めるのは難しいため、専門的な支援を受けられる機関に相談しましょう。
事業承継の相談先を選ぶときのチェックポイント

事業承継の相談先を選ぶときは、以下の項目をチェックしましょう。
- 事業承継の実績が豊富にあるか
- 相談内容との相性がいいか
- 担当者とコミュニケーションが取りやすいか
それぞれ詳しく紹介します。
事業承継の実績が豊富にあるか
事業承継の相談先を選ぶ際は、十分な実績があるかを確認しましょう。
事業承継は相続や経営、法的手続きが絡む複雑な問題であり、実績の少ない窓口では適切なアドバイスを受けられない可能性があります。
ホームページなどで事業承認の実績を調べてから、相談先を決めましょう。
相談内容との相性がいいか
相談先を選ぶときは、自分の相談内容とその機関の得意分野が合っているかを見極めましょう。
たとえば、資金調達やM&Aが課題であれば、金融機関や専門のコンサルティング会社、相続税対策をしたいときは税理士に相談するのがおすすめです。
すべての機関があらゆる相談に対応できるわけではないため、自分の悩みに合った窓口を選ぶことが大切です。
担当者とコミュニケーションが取りやすいか
事業承継は長期間にわたって取り組むことが多いため、相談先の担当者と信頼関係を築けるかどうかも大切なポイントです。
たとえ実績が豊富でも、説明がわかりにくかったり、話を親身に聞いてもらえなかったりすると、スムーズな承継が難しくなるでしょう。
信頼できる担当者と継続的に話せる環境こそ、安心した承継につながります。
「自分の話をよく聞いてくれるか」「専門用語をかみ砕いて説明してくれるか」などからコミュニケーションの取りやすさをチェックしましょう。
自分に合った相談窓口を見つけて事業承継をスムーズに進めよう
事業承継の相談窓口は、自社の悩みに合ったところを選びましょう。
そのためには、各窓口でどのようなサポートを受けられるのかを確認しておくことが大切です。
加えて、事業承継の実績や担当者との相性もチェックするようにしましょう。
相談先に悩んでいる方や、窓口ごとに受けられる支援内容がわからない方はお気軽にご相談ください。
監修者:東本 隼之
AFP認定者、2級ファイナンシャルプランニング技能士
コメント