家族や親族が亡くなった際に、葬儀や埋葬にかかる費用の負担が不安な方もいるのではないでしょうか。
故人が健康保険の被保険者であれば、埋葬料として一定額を受け取れる可能性があります。
ただし、誰もが受け取れるわけではないので、どのような方が支給対象となるのかを知っておくことが大切です。
本記事では、協会けんぽの制度を基本として、埋葬料の概要や支給対象者、申請方法を解説します。
埋葬料以外に受け取れる可能性がある公的給付金も紹介するので、ぜひ参考にしてみてください。
埋葬料とは

埋葬料とは、健康保険の被保険者または被扶養者が亡くなった際に支給される公的な給付金のことです。
被保険者が亡くなった場合は、被保険者から経済的支援を受けていた方に一定額が支給されます。
被保険者の扶養家族が亡くなったときは、被保険者に一定額の家族埋葬料が支給されます。
協会けんぽの支給額は、一律5万円です。
健康保険組合によっては付加金を上乗せして支給する場合があるため、加入先のウェブサイトや電話で確認してみましょう。
埋葬料の支給対象者
埋葬料の支給対象となるのは、被保険者に生計を維持されていた方です。
経済的な支援を受けていた事実があれば、同居していない親族でも申請が可能です。
たとえば、内縁の配偶者や別居していた子、経済的支援を受けていた友人も生計維持の事実が認められれば支給対象となります。
ただし、生計維持を証明するには、単発ではなく定期的・継続的な仕送りをしていた記録が必要です。
同居していた場合でも、故人が家賃や光熱費などを負担していた事実といった同一家計であったことを裏付ける情報が求められることがあります。
被保険者が退職などで健康保険の資格を失ったあとに亡くなった場合でも、以下のいずれかに該当すれば、埋葬料を受け取れる場合があります。
- 資格喪失後3ヶ月以内に亡くなった
- 傷病手当金や出産手当金の継続給付期間中に亡くなった
- 傷病手当金や出産手当金の継続給付を受け終えてから3ヶ月以内に亡くなった
なお、業務上や通勤途中の事故などの労災によって亡くなった場合は、労災保険の「葬祭料」が優先的に支給されるため、埋葬料は支給されません。
埋葬費・葬祭費との違い
埋葬料と混同されやすいものとして「埋葬費」と「葬祭費」があります。
埋葬費とは、故人に生計を維持されていた遺族がいない場合に、埋葬を行った方に支給される給付金です。
葬祭費とは、国民健康保険の被保険者が亡くなった際に、葬祭を行った方に対して自治体から支給される給付金のことです。
それぞれ支給対象者や支給額が以下のように異なります。
| 支給されるケース | 支給対象者 | 支給額 | |
| 埋葬料 | 健康保険加入者が亡くなった場合 | 故人によって生計を維持されていた方 | 一律5万円(協会けんぽの場合) |
| 埋葬費 | 亡くなった健康保険加入者に経済的支援を受けていた方がいない場合 | 埋葬を行った方 | 埋葬にかかった実費(上限5万円) |
| 葬祭費 | 国民健康保険加入者が亡くなった場合 | 葬祭を行った方 | 3~7万円(自治体によって異なる) |
埋葬費の支給対象となる実費には、棺や霊柩車の費用、火葬料や埋葬料、僧侶への謝礼、祭壇一式料が該当します。
葬儀後の飲食費や香典返しにかかった費用などは、埋葬に直接かかった費用ではないため、支給の対象外となります。
埋葬料の申請方法

埋葬料の申請方法は、以下のとおりです。
- 必要書類を準備する
- 健康保険組合に書類を提出する
- 給付金が振り込まれる
それぞれ詳しく見ていきましょう。
1.必要書類を準備する
埋葬料を申請するための主な必要書類は、以下のとおりです。
| 必要書類 | 概要 |
| 健康保険埋葬料支給申請書 | 健康保険組合のウェブサイトでダウンロードできる |
| 死亡の事実が確認できる公的書類 | 申請書の「事業主証明欄」で事業主の証明を受けられない場合や任意継続被保険者が亡くなった場合は、以下のいずれかの添付が必要・埋葬許可証または火葬許可証のコピー・死亡診断書または死体検案書、検視調書のコピー・故人の戸籍(除籍)謄(抄)本・住民票 |
| 生計維持を確認できる書類 | 申請者が被扶養者でない場合は、以下の添付が必要同居していた場合:住民票の写し別居していた場合:仕送り事実がわかる預金通帳などの写し |
健康保険組合によって必要書類が異なることがあるため、故人の加入先に確認しておきましょう。
2.健康保険組合に書類を提出する
必要書類がそろったら、故人が加入していた健康保険組合に提出しましょう。
故人が会社員であれば協会けんぽまたは健康保険組合、公務員であれば共済組合に提出します。
提出方法は、窓口への持参だけでなく、郵送で提出できる場合もあります。
提出先を間違えると、給付金の受け取りが遅れてしまう原因になるので、故人の健康保険証などで加入先をよく確認しておきましょう。
3.給付金が振り込まれる
申請が受理されると、申請書に指定した銀行口座へ埋葬料が振り込まれます。
支給までにかかる期間は、2~3週間程度です。
ただし、書類の不備があったり、生計維持の確認に時間がかかったりすると、支給が遅れる可能性もあるため注意しましょう。
埋葬料の申請期限

埋葬料や埋葬費には、申請期限が以下のように定められています。
| 給付金の種類 | 申請期限 |
| 埋葬料 | 被保険者(または被扶養者)の死亡日の翌日から2年 |
| 埋葬費 | 埋葬を行った日の翌日から2年 |
期限を過ぎると受け取れなくなるため、早めに申請手続きをしましょう。
埋葬料以外の公的給付金

埋葬料以外にも、以下のような公的給付金を受け取れる可能性があります。
- 遺族年金
- 死亡一時金
- 寡婦年金
それぞれ詳しく解説します。
遺族年金
遺族年金とは、国民年金や厚生年金に加入していた方が亡くなった際に、残された遺族の生活を保障するために支給される年金です。
遺族年金には、遺族基礎年金と遺族厚生年金の2種類があります。
遺族基礎年金は、18歳未満の子(または障がいがある20歳未満の子)がいる配偶者または子が受け取れます。
遺族厚生年金は、故人が厚生年金に加入していた場合に、遺族基礎年金に上乗せして支給される年金です。
遺族年金の受給要件を満たしているときは、年金事務所で手続きをしましょう。
死亡一時金
死亡一時金とは、国民年金の保険料を一定期間納めた第1号被保険者が、年金を受け取る前に亡くなった際に、遺族に支給される一時金です。
遺族が遺族基礎年金を受け取れない場合に、保険料の納付実績を考慮して支給されます。
遺族基礎年金が支給される場合は、死亡一時金を受け取ることができないので注意しましょう。
死亡一時金の申請は、市区町村役場の窓口または年金事務所で行います。
寡婦年金
寡婦年金は、国民年金の第1号被保険者として保険料を納めていた夫が、老齢基礎年金や障害基礎年金を受け取らずに亡くなった場合に支給される年金です。
寡婦年金は、婚姻期間が10年以上あった妻に対して支払われます。
ただし、妻自身が老齢基礎年金を繰り上げ受給している場合は支給されません。
なお、寡婦年金と死亡一時金の両方の受給要件を満たしていても、重複して受け取ることはできず、いずれか一方を選択することになります。
寡婦年金を受け取るためには、市区町村役場の窓口または年金事務所で申請をする必要があります。
健康保険加入者が亡くなったら埋葬料の申請をしよう
健康保険の被保険者や扶養家族が亡くなった際は、経済的支援を受けていた方に埋葬料が支給される可能性があります。
埋葬料を受け取るためには、被保険者の死亡日翌日から2年以内に申請手続きを済ませる必要があります。
埋葬料以外にも、遺族年金や死亡一時金を受け取れる可能性があるため、受給要件を満たしているかを確認することが大切です。
葬儀やその後の生活の経済的負担を軽減するためにも、公的な給付金を活用しましょう。
監修者:東本 隼之
AFP認定者、2級ファイナンシャルプランニング技能士


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