医療費控除では治療費だけでなく、通院のための交通費も対象になることをご存じでしょうか。
通院のために支払った交通費は、医療費控除の対象になるため、申告をすれば節税効果を高められる可能性があります。
ただし、対象とならない交通費もあるので、どのような費用が対象となるのかを知っておくことが大切です。
そこで今回は、医療費控除の対象となる交通費を紹介します。
医療費控除の適用を受ける流れも紹介しているので、医療費控除を利用したいと考えている方は、ぜひ参考にしてみてください。

通院の交通費も医療費控除の対象になる場合がある

医療費控除の対象となる医療費には、治療費や薬代だけでなく、通院のための交通費も含まれます。
まずは、医療費控除で申告できる交通費と、申告できない交通費を紹介します。
医療費控除で申告できる交通費
通院のために利用したバスや電車の料金は原則として、医療費控除の対象になります。
ただし、病状や医療機関の距離などから、一般的な水準を超えると判断された場合は、対象外になる可能性があるので注意が必要です。
たとえば、徒歩で通院できる病状かつ医療機関の場合は、バスや電車を使ってもその料金が対象外となることがあります。
状況によって申告できる交通費
以下のような交通費は原則、医療費控除の対象外となりますが、条件次第では申告できる可能性があります。
- タクシー代
- 家族の交通費
- 遠方の病院に通院するための旅費
電車やバスなどの交通機関がやむを得ない理由で利用できない場合は、タクシー代を交通費として申告できます。
たとえば、以下のようなケースが該当します。
- 病気やけがによって電車・バスの利用が難しい
- 突然の陣痛
- 深夜に救急で医療機関に行く必要があり、タクシー以外の手段がない
家族の交通費は基本的に対象外となりますが、「子どもの通院に親が付き添う」といった患者の年齢や病状からみて患者一人で通院させることが危険な場合は申告できます。
ただし、入院している子どもの世話をするための親の通院費は、患者である子どもが通院していないことから、医療費控除の対象外となるので注意しましょう。
遠方の病院に通院するための旅費が対象となるのは、その病院でなければ治療ができないといった理由がある場合に限られます。
医療費控除で申告できない交通費
医療費控除で申告できないのは、自家用車で通院する場合のガソリン代や駐車場の料金です。
医療費控除で交通費を申告したい場合は、基本的にバスや電車を利用する必要があります。
医療費控除で交通費を申告する際は領収書の保管が必要

医療費控除で交通費を申告する際は、領収書を提出する必要はありません。
ただし、医療費控除で申告した費用に関する領収書は、5年間保管する義務があります。
加えて、申告をするときに交通手段や利用した日付、金額を申告する必要があるため、適切に保管しましょう。
医療費控除の適用を受けるときの流れ

医療費控除を利用するには、2月16日から3月15日までの間に確定申告をする必要があります。
年末調整では申告できないので、会社員であっても自身で申告書を作成して提出することになります。
医療費控除の適用を受ける流れは、以下の通りです。
- 必要書類を準備する
- 申告書を作成する
- 税務署に提出する
順番に詳しく見ていきましょう。
1.必要書類を準備する
まずは、医療費控除の明細書を準備します。
医療費控除を受けるには、医療費の内訳を記載した明細書を確定申告書に添付する必要があります。
医療費控除の明細書に記載する項目は、以下の通りです。
- 医療を受けた方の氏名
- 病院・薬局などの支払先の名称
- 医療費の区分
- 支払った医療費の額
- 生命保険や社会保険などで補填される金額
確定申告のときにまとめて記載すると、手間がかかったり記入漏れをしたりする可能性があるので、Excelなどの表計算ソフトに都度入力して管理するのがおすすめです。
国税庁のホームページでExcel用の医療費集計フォームをダウンロードできるので活用してみましょう。
なお、医療費の領収書は確定申告書に添付する必要はありませんが、5年間保管する義務があるので紛失しないように注意が必要です。
確定申告をするときは、医療費控除の明細書に加えて、以下の書類も準備しておきましょう。
- マイナンバーカード
- 還付を受ける銀行口座の通帳
- 源泉徴収票(給与所得がある場合)
2.確定申告書を作成する
次に確定申告書を作成します。
申告書を作成する際は、国税庁の「確定申告作成コーナー」を利用するのがおすすめです。
確定申告作成コーナーを利用すれば、パソコンやスマートフォンの画面表示に従って入力するだけで申告書を簡単に作成できます。
手書きで作成する場合は、国税庁のホームページでダウンロードしたり、税務署や確定申告会場、自治体の窓口で取得したりしましょう。
3.税務署に提出する
確定申告の提出方法は、以下の3つがあります。
- 税務署の窓口に持参する
- 税務署に郵送する
- e-Taxを利用して提出する
確定申告作成コーナーでは、e-Taxを利用することで申告書を電子データの状態で提出できます。
医療費控除に関するよくある質問

最後に医療費控除に関するよくある質問に回答していきます。
医療費控除が受けられる条件は?
医療費控除は、本人や同一生計の配偶者・家族のために支払った医療費が以下の金額を超えたときに利用できます。
総所得金額 | 医療費の合計 |
200万円以上 | 10万円 |
200万円未満 | 総所得金額の5% |
医療費が10万円以下でも控除を受けられる?
負担した医療費が10万円以下でも控除が受けられるのは、総所得金額が200万円未満で、その所得金額の5%を超える医療費を支払っている人です。
たとえば、総所得金額が150万円の方であれば、医療費が75,000円を超えていれば控除対象となります。
150万円×0.05=75,000円 |
医療費控除ではどのくらい還付金を受け取れる?
医療費控除でどのくらいの還付金を受け取れるかは、課税所得と医療費の負担額によって以下のように異なります。
課税所得 | 所得税率 | 住民税率 | 20万円負担していた場合の還付金 | 30万円負担していた場合の還付金 |
1,000円〜1,949,000円 | 5% | 10% | 15,000円 | 30,000円 |
1,950,000円〜3,299,000円 | 10% | 10% | 20,000円 | 40,000円 |
3,300,000円〜6,949,000円 | 20% | 10% | 30,000円 | 60,000円 |
6,950,000円〜8,999,000円 | 23% | 10% | 33,000円 | 66,000円 |
9,000,000円〜17,999,000円 | 33% | 10% | 43,000円 | 86,000円 |
※総所得金額等が200万円未満の場合を考慮していません。
※実際の還付金額と異なる場合があります。
たとえば、課税所得300万円の方が医療費を20万円自己負担していた場合の還付金は、2万円です。
(20万円-10万円)×(10%+10%)=2万円 |
セルフメディケーション税制と併用できる?
セルフメディケーション税制と医療費控除は、併用できません。
セルフメディケーション税制とは、その年に自身もしくは同一生計の配偶者や家族のために、12,000円を超える対象医薬品を購入したときに控除を受けられる制度です。
医療費控除の特例として設けられた制度であり、健康の維持増進・病気の予防として健康診断や予防接種といった一定の取り組みをしている方が対象になります。
医療費控除の対象となる移動をしたら忘れずに申告しよう
医療費控除で申告できる医療費には、通院のための交通費も含まれます。
通院のためにバスや電車を利用した場合は、忘れずに申告しましょう。
医療費の負担に不安を感じている方は、お気軽にご相談ください。
監修者:東本 隼之
AFP認定者、2級ファイナンシャルプランニング技能士
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