ネット銀行や暗号資産といったデジタル遺産は、相続時に遺族が見落としやすいものです。
デジタル遺産に気付かず放置してしまうと、サブスクリプションサービスの課金が続いたり、税務署から申告漏れを指摘されたりするリスクがあります。
デジタル遺産をスムーズに引き継ぐためには、元気なうちから保有口座やログイン情報を整理し、共有しておくことが大切です。
本記事では、デジタル遺産のよくある相続トラブルや原因、生前にできる対策を解説します。
遺された家族の負担を軽減するためにも、ぜひ参考にしてみてください。
デジタル遺産とは

デジタル遺産とは、故人が遺したインターネット上の資産やデータのことです。
具体的には、ネット銀行の預金や証券口座、暗号資産、サブスクリプション契約などが該当します。
デジタル遺産は物理的な形がなく、インターネット上に存在するため、遺族が存在に気付きにくいという特徴があります。
デジタル遺産のよくある相続トラブル

デジタル遺産のよくある相続トラブルには、以下のようなものがあります。
- デジタル遺産の存在に気付かず、申告漏れにつながる
- 遺産分割協議のやり直しが発生する
- 残高確認や解約手続きに時間がかかる
- 利用規約によって相続できない
それぞれ詳しく見ていきましょう。
デジタル遺産の存在に気付かず、申告漏れにつながる
デジタル遺産は通帳や証書といった物理的な形をもたないため、遺族が存在を把握しきれないまま相続税の申告を済ませてしまうことがあります。
税務調査でデジタル遺産の見落としが発覚すると、故意でなくても申告漏れと見なされるケースが多いです。
その結果、過少申告加算税や延滞税といったペナルティが課され、遺族が想定外の税金を負担することになります。
遺産分割協議のやり直しが発生する
遺産分割協議を終えたあとに新たなデジタル遺産が見つかると、協議内容が無効になったり、協議のやり直しが必要になったりすることがあります。
あらためて協議をするには、相続人全員の同意が必要です。
しかし、すでに遺産を受け取った相続人による反対や、分割済みの財産の返還が生じるため、同意を得るのは簡単ではありません。
やり直しの同意を得たとしても、事務手続きの手間に加えて、親族との再協議が心理的負担になるでしょう。
残高確認や解約手続きに時間がかかる
デジタル遺産には窓口のないサービスが多く、残高確認や解約手続きに時間がかかることも少なくありません。
手続きの多くは、郵送や専用フォームでのやり取りが中心となるため、完了までに想定以上の時間を要することもあります。
手続きの遅れによって、サブスクリプションの料金が引き落とされ続けたり、支払いが滞ったカード代金に延滞利息が加算されたりすると、相続財産が目減りしてしまうので注意が必要です。
利用規約によって相続できない
デジタル遺産の中には、金銭的価値があっても相続できないものが存在します。
たとえば、クレジットカードやスマホ決済のポイントは、利用規約によって「相続不可」と定められていることが多いです。
遺族が勝手にポイントを使うと、規約違反行為になるだけでなく、財産の使い込みと見なされて親族間のトラブルに発展するリスクがあります。
そのような状況を防ぐためには、生前に本人がポイントを使い切るか、家族へのポイント共有設定を活用して引き継ぐことが大切です。
デジタル遺産が相続トラブルにつながる原因

デジタル遺産が相続トラブルにつながる原因は、以下のとおりです。
- ペーパーレス化によって遺産の存在に気付きにくい
- パスワードがかかっていて遺産の詳細を把握できない
- サービスによって手続きが異なる
それぞれ詳しく解説します。
ペーパーレス化によって遺産の存在に気付きにくい
ネット銀行やネット証券は、通帳の発行や利用明細の郵送をしないのが一般的です。
そのため、故人宅に保管された通帳や郵便物が遺産を探すための重要な手がかりとなります。
しかし、デジタル遺産には物理的な形跡がないので、遺族がスマホやメールの内容をチェックしない限り、口座の存在を見落としてしまう可能性が高くなります。
パスワードがかかっていて遺産の詳細を把握できない
デジタル遺産を調査するためには、スマホのロック解除やアプリへのログインが必要になります。
しかし、セキュリティのために設定されたパスワードを本人以外が解除するのは困難です。
パスワードがわからなければ、銀行残高や暗号資産の保有状況といった遺産の詳細を確認できず、相続手続きが進みにくくなります。
サービスによって手続きが異なる
デジタル遺産の手続き方法は、サービスによって異なります。
実店舗がない店舗では、対面相談することが難しく、海外事業者のサービスを利用している場合は戸籍謄本といった日本の相続関係書類が受理されないケースも少なくありません。
また、二段階認証が設定されている場合、スマホを解約することで認証コードを受け取れず、ログインできなくなってしまうことがあります。
デジタル遺産の相続手続きは、相談窓口や手順がわかりにくいものが多く、相続トラブルを招きやすいのです。
生前にできるデジタル遺産の相続対策

生前にできるデジタル遺産の相続対策には、以下のようなものがあります。
- デジタル遺産リストを作成する
- スマホの合鍵設定をする
- 不要なサービスを解約する
- 預貯金口座とマイナンバーを紐付ける
- 遺言書を作成する
それぞれ詳しく解説します。
デジタル遺産リストを作成する
遺族がデジタル遺産を見落とさないようにするためには、利用しているネット銀行や証券、暗号資産、サブスクリプションサービスを一覧にまとめておくことが大切です。
セキュリティの観点から各サービスのIDやパスワードを書くのが不安な場合は、保管場所を記すだけでも遺族の調査負担を軽減できます。
エンディングノートや財産目録に「パスワード管理アプリを使っている」「金庫にメモがある」といった情報を記載しておきましょう。
スマホの合鍵設定をする
スマホには、写真やメッセージだけでなく、金融機関からのメールやサブスクリプションサービスの情報といった遺産を特定するための重要なデータが入っています。
遺族がスマホのロックを解除できなければ、デジタル遺産を見落とす可能性が高まります。
そのような状況を避けるためには、あらかじめiPhoneの「故人アカウント管理連絡先」やGoogleの「アカウント無効化管理ツール」の設定を済ませておくことが大切です。
スマホの合鍵設定をしておけば、本人の死後に限り、パスワードを知らない遺族が写真やメッセージ、メモなどを閲覧できるようになります。
ただし、各サイトのログインパスワードは閲覧できないため、重要なログイン情報は別途残しておきましょう。
不要なサービスを解約する
遺族の負担を軽減するためには、生前に使っていない有料アプリやサブスクリプションサービスを整理しておくことが大切です。
本人が亡くなったあとも、クレジットカードや銀行口座が有効な限り引き落としが続き、遺族が気付くまで無駄な支出が生じるケースがあります。
また、放置されたSNSアカウントは、乗っ取りやなりすましに悪用されることがあるので注意が必要です。
生前に不要なサービスを解約しておけば、遺族の経済的・精神的負担を抑えられるでしょう。
預貯金口座とマイナンバーを紐付ける
預貯金口座の見落としを防ぐためには、生前に口座管理法に基づいて預貯金口座とマイナンバーを紐付けておくのが効果的です。
紐付けを済ませておけば、死後10年間に限り、遺族が「どの金融機関に口座があるか」を照会できるようになります。
自作のリストに記載し忘れたネット銀行などの見落としを防ぐことにもつながります。
申請には手数料と法定相続人である証明が必要ですが、故人のマイナンバーは不要です。
遺言書を作成する
ネット証券や暗号資産といったデジタル遺産は高額になることも多いため、法的に有効な遺言書を残しておくことが重要です。
遺言書に「誰にどの遺産を引き継ぐか」を明記しておけば、親族間の争いを防げるだけでなく、名義変更や換金手続きをスムーズに進めやすくなります。
デジタル遺産の相続対策をしてトラブルを防ごう
デジタル遺産の相続対策をしていなければ、家族に調査の手間や想定外の経済的負担をかけてしまう可能性があります。
家族の負担を軽減するために、元気なうちに利用しているサービスのリスト化や不要なサブスクの解約を済ませておくことが大切です。
相続準備をする際は、月額課金が続くサブスクリプションの整理から始め、金銭的価値があるネット銀行や証券口座の情報を優先的に共有するようにしましょう。
家族が困らないためのデジタル資産の管理・共有方法を知りたい方は、お気軽にご相談ください。
監修者:東本 隼之
AFP認定者、2級ファイナンシャルプランニング技能士


コメント