相続人の一人に連絡が取れず、相続手続きをどう進めればよいのか困っている方もいるのではないでしょうか。
相続では原則として相続人全員の合意が必要となるため、連絡が取れない相続人がいると遺産分割や不動産の名義変更などの手続きを進められなくなる可能性があります。
そのため、放置せずに住所の調査や家庭裁判所への申し立てなど、状況に応じた適切な対処をすることが大切です。
今回は、相続人と連絡が取れない場合に起こる問題や、具体的な対処法を解説します。
相続人と連絡が取れないことで相続手続きが進まず困っている方は、ぜひ参考にしてみてください。

【原則】相続人と連絡が取れないと相続手続きができない

相続人と連絡が取れない場合は、原則として相続手続きを進められません。
相続では遺産をどのように分けるかを決める「遺産分割協議」を行う必要があり、遺産分割協議は相続人全員の参加と同意が求められます。
遺産分割協議が成立しないと、預貯金の払い戻しや不動産の名義変更などの相続手続きができません。
相続人の一人でも連絡が取れない場合は、手続きが止まってしまう点に注意が必要です。
ただし、被相続人が遺言書を残している場合は、遺言書の内容に従って財産を分けることになるため、遺産分割協議が不要になることがあります。
その場合は、相続人の一人と連絡が取れなくても、手続きを進められる可能性があります。
相続人と連絡が取れないまま放置するとどうなる?

相続人と連絡が取れないまま放置すると、以下のようなことにつながります。
- 不動産の名義変更・売却ができない
- 相続関係が複雑になる
- 相続税の特例制度を利用できなくなる可能性がある
それぞれ詳しく解説します。
不動産の名義変更・売却ができない
不動産は遺産分割協議が終わるまで、相続人全員の共有財産となります。
そのため、不動産の売却や活用ができない状態が長く続きます。
結果として、不動産の管理費用や固定資産税の支払いだけが残り、家計に大きな負担がかかるでしょう。
相続関係が複雑になる
相続人と連絡が取れない状態で放置すると、相続関係がさらに複雑になる可能性があります。
たとえば、相続手続きが進まない状態で相続人の一人が亡くなると、その子どもや配偶者などが新たな相続人として加わることがあります。
相続人が増えていくと、関係者の人数が多くなり、遺産分割の合意を得ることがさらに難しくなるケースが多いです。
その結果、手続きに必要な書類や調整が増えて相続手続きにかかる労力が大きくなる可能性があります。
相続税の特例制度を利用できなくなる可能性がある
相続人と連絡が取れないことで遺産分割が決まらないと、相続税を減額できる特例制度が受けられなくなる可能性があります。
代表的な制度には、配偶者の税金が大幅に安くなる「配偶者の税額軽減」や、自宅の土地の評価額を下げられる「小規模宅地等の特例」があります。
これらの特例の適用条件は、原則として「相続税の申告期限内に遺産分割が終わっていること」です。
相続税の申告期限は、被相続人が亡くなったことを知った日の翌日から10ヶ月以内です。
この期間内に協議がまとまらない場合は、特例を使わない高い税額で納税しなければなりません。
「申告期限後3年以内の分割見込書」を提出しておけば、分割が成立した際に還付を受けられますが、一時的に多額の納税資金を用意する負担が生じる点に注意しましょう。
相続人と連絡が取れないときの対処法

相続人と連絡が取れないときは、以下のことを行いましょう。
- 住所を調べる
- 手紙を送る
- 不在者財産管理人の選任を申し立てる
- 遺産分割調停を申し立てる
- 失踪宣告を申し立てる
- 専門家に相談する
一つずつ詳しく解説します。
住所を調べる
相続人と連絡が取れない場合は、まず住所を調べましょう。
長期間連絡を取っていなくても、戸籍謄本や住民票などの公的書類を確認することで現在の住所が判明することがあります。
なかでも、戸籍附票であれば、戸籍に記載されている人の過去から現在までの住所の履歴を確認できます。
ただし、結婚によって新たな戸籍がつくられている場合は確認できません。
手紙を送る
住所が判明したときは、手紙を送って連絡を試みましょう。
相続が発生した事実と、遺産分割協議のために連絡が欲しい旨を伝えます。
相手が意図的に避けているのではなく、単に相続の発生を知らないだけの可能性もあるため、高圧的な文章にならないように注意が必要です。
自身の連絡先や返信方法を明確にしておくことも忘れないようにしましょう。
内容証明郵便を利用すると、通知した事実を証明できるため、その後の手続きに役立つでしょう。
不在者財産管理人の選任を申し立てる
相続人の所在がわからず長期間連絡が取れない場合は、家庭裁判所に不在者財産管理人の選任を申し立てる方法があります。
不在者財産管理人とは、行方がわからない人の財産を管理するために裁判所が選任する人物のことです。
不在者財産管理人が選任されると、その人が不在者の代理として遺産分割協議などに参加できるようになります。
音信不通の相続人がいる場合でも、相続手続きを進めることが可能になります。
遺産分割調停を申し立てる
相続人同士の話し合いが進まない場合は、家庭裁判所に遺産分割調停を申し立てることを検討しましょう。
遺産分割調停とは、家庭裁判所の調停委員が間に入り、相続人同士の合意形成をサポートする手続きのことです。
裁判所からの呼び出しであれば、連絡を無視していた相続人も応じる可能性があります。
相手が最後まで出席しない場合でも、審判という手続きに移行すれば、裁判官が法的な判断で遺産分割を確定することになります。
失踪宣告を申し立てる
相続人が長期間行方不明で生死がわからない場合は、失踪宣告を申し立てることも選択肢の一つです。
失踪宣告は原則として、生死が7年以上不明である場合に家庭裁判所へ申し立てることが可能です。
失踪宣告が認められると、その人は法律上死亡したものと見なされるため、相続手続きを進められるようになります。
ただし、失踪宣告の申し立てから審判確定には、半年から1年ほどかかる点に注意が必要です。
専門家に相談する
相続人と連絡が取れない場合は、弁護士や司法書士などの専門家に相談するのがおすすめです。
相続手続きでは法律や裁判所の手続きが関係することが多く、個人だけで対応するのは難しいでしょう。
専門家に相談すれば、相続人の調査方法や適切な手続きについて具体的なアドバイスを受けられます。
不在者財産管理人の申立てや調停の手続きなどをサポートしてもらえる場合もあります。
相続人と連絡が取れない場合のよくある質問

最後に相続人と連絡が取れない場合のよくある質問に回答していきます。
連絡が取れない相続人は無視してもいい?
連絡が取れない相続人を無視して手続きを進めることはできません。
遺産分割協議は、法律によって相続人全員の合意が必要であると定められています。
行方がわからない場合は、放置や無視をするのではなく、不在者財産管理人の選任など、正式な手順を踏んで解決することが大切です。
相続人全員と連絡が取れなくても相続放棄できる?
他の相続人と連絡が取れない状況であっても、自身の相続放棄の手続きを行うことは可能です。
相続放棄は、各相続人が個別にできる手続きであり、他の相続人の同意は必要ありません。
相続放棄をする際は、相続開始から3ヶ月以内に家庭裁判所へ必要書類を提出しましょう。
勝手に遺産を分けるとどうなる?
一部の相続人だけで勝手に遺産を分けたり処分したりすると、その手続きが無効になります。
分割が完了するまで遺産は相続人全員の共有財産として扱われるため、他人の財産を侵害する行為として損害賠償請求などの法的措置を取られる場合があります。
そのような事態を避けるためにも、正式な手順を踏んでから、遺産分割を進めましょう。
相続人と連絡が取れない場合は適切な方法で早めに対処しよう
相続人と連絡が取れないと、遺産分割協議が進められないだけでなく、不動産の名義変更や特例の利用ができなくなる可能性があります。
連絡の取れない相続人がいるときは、放置するのではなく、相続人の住所を調べて手紙を送るなどの適切な方法で対処することが大切です。
ただし、相続状況によって適切な対処法は異なるため、自己判断で進めると手続きが複雑化する可能性もあります。
相続をスムーズに進めるためにも、弁護士や司法書士などの専門家への相談も視野に入れましょう。
適切な相談先がわからず悩んでいる方は、お気軽にご相談ください。
監修者:東本 隼之
AFP認定者、2級ファイナンシャルプランニング技能士



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