個人事業主のなかには「税金を払えなければどうなるのか」「納税資金が足りないときはどうすればいいのか」といった疑問をもっている方もいるのではないでしょうか。
税金を滞納すると、延滞税が課されたり、財産を差し押さえられたりする可能性があります。
そのような状況を避けるためには、納税のタイミングを調整できる猶予制度を知っておくことが大切です。
本記事では、税金を滞納した際に発生するペナルティや、個人事業主が納めるべき税金の種類、税金が払えないときに活用できる猶予制度を解説します。
税金を滞納しないための対策も紹介するので、ぜひ参考にしてください。
個人事業主で税金が払えないとどうなる?

個人事業主で税金が払えないときは、以下のようなペナルティが科される可能性があります。
- 延滞税が発生する
- 税務署から督促状が届く
- 財産を差し押さえられる
それぞれ詳しく解説します。
延滞税が発生する
税金を定められた期限までに納付しなければ、ペナルティとして「延滞税」が発生します。
延滞税とは、本来の税額に上乗せされる利息のようなもので、納期限の翌日から納付日までの日数に応じて課されます。
滞納期間が長くなるほど納税額が増えるので、早めに対応することが大切です。
税務署から督促状が届く
納期限を過ぎて未納の状態が続くと、税務署から督促状が届きます。
督促状が発送されてから10日経過すると、税務署に財産を差し押さえる権利が発生します。
財産の差し押さえを未然に防ぐためにも、督促状が届いたらすぐに対処するようにしましょう。
財産を差し押さえられる
督促状を受け取っても対応せず放置していると、税務署による差し押さえが実行されます。
差し押さえの対象となるのは、預金や事業に必要な機材、店舗、自動車といった金銭的価値のある財産です。
差し押さえられた財産は売却され、売却益が滞納している税金の納付に充てられます。
個人事業主が支払う税金

個人事業主が支払う税金には、以下のようなものがあります。
- 所得税
- 住民税
- 個人事業税
- 消費税
それぞれ詳しく見ていきましょう。
所得税
所得税は、1月1日~12月31日までの1年間に得た所得にかかる国税です。
所得金額が、基礎控除や青色申告特別控除などの合計額を上回った場合に納付義務が発生します。
個人事業主は、前年の所得と税額を計算し、毎年2月16日~3月15日に住所地を管轄する税務署へ確定申告と納税を済ませる必要があります。
住民税
住民税は、前年の所得に応じて課される地方税で、確定した所得をもとに自治体から税額が通知されます。
所得税の確定申告をしていれば申告内容が自治体へ共有されるため、住民税の申告を別途行う必要はありません。
所得税の確定申告が不要な方でも、事業所得がある場合は住民税の申告が必要となるので注意しましょう。
住民税の納付は、毎年6月頃に自治体から届く納税通知書を用いて、6月・8月・10月・翌年1月の計4回に分けて行います。
個人事業税
個人事業税は、物品販売業や飲食業といった法律で定められた業種を営む個人事業主にかかる地方税です。
年間所得に290万円の事業主控除が適用されるため、控除額を超える所得がある場合に課税されます。
所得税の確定申告や住民税の申告をする方は、申告内容に基づいて税額が計算されるため、個人事業税の申告をする必要はありません。
個人事業税がかかる場合、各都道府県の税事務所から送付される納付書を用いて毎年8月と11月の年2回に分けて納税します。
消費税
消費税は、商品やサービスの提供といった消費活動に対して課される間接税です。
消費税の納税義務の有無は、2年前の課税売上高で判定されます。
2年前の課税売上高が1,000万円を超える事業者は、預かった消費税から仕入れ時に支払った消費税を差し引いた差額の納付が必要です。
インボイス制度に登録した事業者は、2年前の課税売上高が1,000万円以下であっても課税事業者となります。
消費税の確定申告と納付は、毎年3月末までに住所地を管轄する税務署で行う必要があります。
個人事業主で税金が払えないときに活用できる制度

個人事業主で税金が払えないときに活用できる制度には、以下のようなものがあります。
| 制度 | 概要 |
| 延納制度 | 納期限までに半分以上を納めれば、残りの支払いを5月末まで延長できる |
| 納税の猶予 | 災害や病気、事業の損失などで納税が困難な場合に1年以内の分割納付ができる |
| 換価の猶予 | 差し押さえ財産の売却(換価)や財産の差し押さえを1年間猶予してもらえる |
それぞれ詳しく解説します。
延納制度
延納制度とは、納期限までに所得税額の半分以上を納付すれば、残りの納付を5月末まで延長できる制度です。
延納制度を利用する際は、確定申告書に延納したい金額などの必要事項を記入し、申告期限内に提出しましょう。
ただし、延納期間中は年1.3%の割合で利子税がかかるので、資金に余裕ができたら早めに納付して負担を抑えることが大切です。
納税の猶予
納税の猶予は、災害や病気、事業の著しい損失などにより、納税が一時的に困難な場合に利用できる制度です。
申請が認められれば、1年以内の期間で分割納付ができ、猶予期間中の延滞税が軽減または免除されます。
納税の猶予を受けるための要件は、以下のとおりです。
- 災害や病気などの猶予該当事実によって納付が難しい
- 申請書を提出している
- 原則として担保を提供できる
担保は、猶予税額が100万円以下である場合や、猶予期間が3ヶ月以内である場合などには、提供不要となります。
納税の猶予に申請期限は設けられていないため、納付が難しいと感じたタイミングに「納税の猶予申請書」を提出しましょう。
換価の猶予
換価の猶予とは、滞納処分による財産の差し押さえや、差し押さえた財産の売却(換価)を1年間猶予する制度です。
猶予期間中は、延滞税が軽減または免除されます。
換価の猶予を受けるには、以下の要件をすべて満たしていなければなりません。
- 一括納付で事業継続や生活維持が困難になる
- 納税する意思がある
- 猶予対象以外の税金を滞納していない
- 納期限から6ヶ月以内に申請書を提出している
- 原則として担保を提供できる
担保の提供は、猶予を受ける税額が100万円以下である場合や、猶予期間が3ヶ月以内である場合など、一定の要件を満たす場合に免除されることがあります。
換価の猶予を受ける際は、税金の納期限から6ヶ月以内に「換価の猶予申請書」を提出しましょう。
個人事業主が税金を滞納しないための対策

個人事業主が税金を滞納しないためには、以下のような対策が効果的です。
- 納税資金を積み立てる
- 振替納税やクレジットカード払いを活用する
- 税理士や税務署に早めに相談する
それぞれ詳しく見ていきましょう。
納税資金を積み立てる
個人事業主が税金の滞納を防ぐためには、毎月の売上から納税分の資金を確保することが大切です。
売上が入金された時点で所得税や住民税などの概算額を専用口座に移す仕組みをつくりましょう。
自動送金サービスを活用すれば、手間をかけずに納税資金を貯めることができ、資金を使い込んでしまうことも防げます。
納税資金を積み立てる習慣を身につけられれば、納税資金が不足する状況を避けられるでしょう。
振替納税やクレジットカード払いを活用する
振替納税を活用すれば、引き落とし時期が通常の納期限より約1ヶ月遅くなるため、資金繰りに余裕が生まれます。
振替納税とは、納税者名義の預貯金口座からの口座引落しで税金を納付する方法です。
振替納税をするためには、税務署または金融機関に口座振替依頼書を提出する必要があります。
クレジットカード納付をして、引き落とし日までの猶予期間を確保することも可能です。
ただし、クレジットカード納付ではカード会社所定の決済手数料がかかるので注意しましょう。
税理士や税務署に早めに相談する
税金を滞納しないためには、納税資金に余裕がないと感じた時点で早めに税理士や管轄の税務署に相談することが大切です。
税理士に相談すれば、経営状況を踏まえたうえで納税資金を捻出するための資金繰りの改善策や有効な節税対策を提案してもらえます。
納税資金の確保が難しい場合は、税務署に相談して猶予制度を紹介してもらいましょう。
滞納してからでは選択肢が限られてしまうため、納税が厳しいと感じた段階で専門家に相談しましょう。
税金が払えない個人事業主は猶予制度を活用しよう
個人事業主が税金を滞納すると、延滞税が課されるだけでなく、財産を差し押さえられる可能性があります。
そのような状況を防ぐためには、延納制度や納税・換価の猶予といった制度を活用することが大切です。
猶予制度を利用すれば、支払いの負担を一時的に軽減し、無理のないペースで納税できます。
納税資金が不足しそうなときは、税務署や税理士などの専門家に早めに相談するようにしましょう。
どの制度を活用できるか知りたい方や、具体的な申請方法を知りたい方は、お気軽にご相談ください。
監修者:東本 隼之
AFP認定者、2級ファイナンシャルプランニング技能士


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